韓国のZ世代を中心に、少し前からバズっている言葉「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」。韓国国内メディアでも、こちらの話題は取り上げられたりしています。そんな「낭만(ナンマン)」は日本語の「浪漫(ロマン)」からきた言葉と言われています。この記事では、この言葉が注目される理由に迫ってみました。
※語学には諸説あります。あくまでも一表現方法として’参考’にしてください。
そもそも日本語の「浪漫(ロマン)」はどのように誕生したのか
昔の中世ヨーロッパで、ラテン語の 「romanice」が「ローマ風に」「ローマの言葉で」という意味で使用されていました。そして「ロマンス語」で書かれた騎士の恋愛や武勇を扱った物語が「ロマンス語で書かれたもの=romanz」と呼ばれるようになり、「romance」が誕生しました。
その「roman」が英語「romance(名詞)」「romantic(形容詞)」などへと発展するとともに、恋愛や冒険心というような意味が加わりました。
この英語の意味は日本語に大きく影響し、夏目漱石が漢字で「浪漫(ロマン)」と当てて、現代の「夢や冒険への憧れ」といった意味で使われることが一般的となったと言われています。
日本語「浪漫(ロマン)」が韓国語「낭만(ナンマン)」に
この「浪漫(ロマン)」という言葉が日本から韓国に伝わり、韓国でも「낭만(ナンマン)=浪漫」という言葉が漢字読みで使われるようになりました。韓国でももともとは、日本語と同じような意味「夢や冒険への憧れ」で使用される言葉です。
一方で、現代の韓国Z世代の若者が使う韓国語の「낭만=浪漫」には、日本語でいう「エモい」というニュアンスの意味も含まれるようになり、より広い意味になりました。広い意味でたくさんの若者に使用されるようになった「낭만(ナンマン)」という文字は、SNSでもよく見かけるようになりました。
이세계(ESEGYE)という韓国バンドの有名な歌「낭만젊음사랑 가사(浪漫 若さ 愛)」では、
「僕らはロマンスという船に乗って旅立つ
僕らは若さという船に乗って旅立つ
僕らは愛という船に乗って旅立つ
何も知らないけれど、僕らは大丈夫だろう」
という歌詞があり、こちらも2020年にリリースされたにもかかわらず、再び注目されました。
▼韓国語の歌の歌詞によく出る言葉をまとめた記事もあります。

ちなみに、韓国でも日本と同じく「ロマンティック」という言葉も広く使われています。ロマンティックは、「로맨틱(ロマンティック)」もしくは「낭만적(ナンマンジョㇰ)」と言います。
韓国のZ世代が使う「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」とは
先ほども言及したとおり、韓国の若者が使用する「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」には、「夢や冒険への憧れ」という意味に加えて、「エモい」というニュアンスの意味も含まれます。
では、具体的にどのようなシチュエーションで、この「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」という言葉が使われているのかを見ていきましょう。
①カフェでの一人時間
カフェの雰囲気や店内で流れる音楽に浸りながら、過去の思い出や感情を振り返ったり、読書をして想像を巡らせたりする時間を「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」と言ったりします。
日常の中の小さな幸せや感動を再認識する貴重な時間を指します。
②アナログ製品=浪漫アイテム
アナログ製品が再ブームとなっています。デジタル製品が与える便利さではなく、逆に、アナログ製品特有の昔のロマンチックな感性や雰囲気を求め、喜んで不便な方を選択するのです。 むしろこの不便さに魅力的に感じるのです。アナログ製品は「낭만 아이템(ナンマン アイテム)/浪漫アイテム」と呼ばれるようになりました。
指さえ動かせば写真を撮って画面で結果を確認できるスマートフォンの代わりに、写真屋を直接訪ねて現像しなければならないフィルムカメラが、特に注目を集めています。
③意図的にノイズやアナログ感のある音を取り入れた音楽ジャンル
ローファイ(Lo-fi=Low-Fidelity)と呼ばれる、もともとは「低音質」を意味しますが現代では「意図的にノイズやアナログ感のある音を取り入れた」という意味を持つ、温かくゆったりとした音楽ジャンルが流行中。つまり、わざわざ音質を下げているのです。レコードやカセットテープから出てきそうなアナログな感じを楽しむトレンドです。
④「굳이데이(クジデイ)/敢えてデー」
韓国ではという言葉が誕生しました。文字通り、ロマンのためなら、敢えてしなくてもいいことをする日という意味です。たとえば、休日に長い時間を運転してキャンプに行く、空港に行って世界各国を行き来する飛行機だけを見て帰ってくる、天文台に上って星と月を見る、お弁当を用意して遠足に行く、オンラインで配送する代わりに書店に寄って本を買ってくるなどです。
⑤アニメ「スラムダンク」
韓国では、90年代のアニメ「スラムダンク」が若者の間で再ブーム。劇場版が作られたこともあり、話題を呼びました。ロマンチックな成長物語が持つ魅力が若者を魅了しています。こちらは、どちらかというと辞書的な意味の「夢や冒険への憧れ」に近いです。
⑥サッカーやeスポーツ
スポーツやエンタメの世界でも、「浪漫」として楽しむ若者が急増。試合の結果やドラマティックな展開が、まさに「낭만적(ナンマンジョㇰ)=ロマンティック」です。
韓国のZ世代で「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」がバズった理由を考察
どの国でも、「流行は回る」と言われます。
わかりやすい例を挙げると、Y2Kファッション(2000年前後に流行した「Year 2000」を意味するスタイル)が、最近になってまた流行していたりします。
このように、韓国で最近また戻ってきたトレンドのひとつとして、キーワード「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」があると思います。
現実だけに縛られず、理想を追うという「浪漫(ロマン)」の辞書的な意味のように、自分だけの楽しみと目標のために前後を選ばずに挑戦するZ世代が多くなったことを背景に、またこの言葉が注目されたのではないでしょうか。
その「浪漫(ロマン)」が、Z世代の間で使われ始めるとともに、辞書的な意味を飛び出して、広い意味に発展したのかもしれません。
日本でも若者の間で「エモい」という言葉が使われるようになりました。それに似た感情を韓国の若者が持つのも不思議ではないことです。そのような感情を持つシチュエーションに「浪漫(ロマン)」を当てはめるようになったとも考えられます。
あくまで筆者の考察なのですが、他にもさまざまな理由が考えられると思います。
韓国語に限らず言語は日々変化しており、大変興味深い領域だと感じますね。
最近のトレンド韓国語「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」を使ってみよう!
こちらの記事を読んで意味や使用シーンを理解したら、韓国の友達と会話するときなどに、「낭만(ナンマン)/浪漫(ロマン)」をぜひ使用してみてください。「韓国語上級者!」と褒められるかもしれません。
▼ワンジョンでは、韓国の若者が実際に使う韓国語も詳しく紹介しています。
