日本でもすっかり身近になった韓国料理「キムチ」。
実は韓国では、キムチは単なる食べ物ではなく、深い歴史と共同体のつながりを象徴する存在です。なかでも “キムジャン(김장)” と呼ばれるキムチ作りの伝統文化は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されており、韓国人の暮らしに深く根づいています。
今回は、キムジャンの歴史・文化的な意味から、キムチの進化、地域ごとの違いまで、韓国の食文化の奥深さをたっぷり紹介します。
“キムジャン”とは?韓国の暮らしを支えてきた共同作業
キムジャンとは、「家族や地域の人たちが集まり、大量のキムチを共同で漬け込む伝統的な行事」。
季節に関係なく、家族の予定に合わせて行われることもあり、今も多くの家庭で大切に続けられています。
かつては冷蔵庫が普及していなかったため、保存食として大量のキムチを仕込み、甕(かめ)に入れて保存していました。その作業は、家族や近所の人をつなぐ“年中行事”として機能し、共同体意識を深める大切なイベントでもありました。
キムジャン文化がユネスコ無形文化遺産に登録された理由は、まさにこの “共同性” にあります。
キムチの起源と進化の歴史
キムチは、もともと塩漬け文化が朝鮮半島に広がったことから始まったと言われています。
初期のキムチ:唐辛子なしの淡白な漬物
野菜の塩漬けが中心。
高麗時代:沈菜(チムチェ)の登場
ニンニク・生姜などの香味野菜が加わり、味に深みが出る。
18世紀:唐辛子入りキムチが普及
発酵が進み旨味が増し、現在の“赤いキムチ”の原型に。
19世紀後半:白菜キムチの誕生
現代の定番キムチ文化が全国に広がる。
日本でも身近な「白菜キムチ」は、歴史的には比較的新しいスタイルといえます。
昔のキムジャンと現代のキムジャンはどう違う?
昔のキムジャン
・近所中の家庭が集まって共同作業
・100株以上を漬けることもある大イベント
・材料はほぼ自家製(野菜・調味料)
・保存は地中に埋めた甕(かめ)
現代のキムジャン
・家族単位や少人数で実施
・下漬け済みの白菜セットを購入できる
・作業時間を短縮できる「キムチの素」も普及
・保存は冷蔵庫やキムチ専用冷蔵庫(普及率が非常に高い)
▼キムチ冷蔵庫の記事はこちら
https://wanjeon.tv-aichi.co.jp/014-article/
キムジャンの基本プロセス
- 材料の準備
白菜、大根、からし菜、ねぎなど
唐辛子粉、にんにく、生姜、塩辛、果物(梨・リンゴ)を調味料に使用 - 白菜の下漬け
塩水に数時間浸して水分を抜く - 調味料(ヤンニョム)作り
野菜と調味料を混ぜた発酵ペースト - 塗り込み作業
白菜の葉一枚一枚に丁寧に塗る - 保存
甕や保存容器に入れて熟成させる - 作りたての楽しみ方
浅漬けのキムチは豚肉を巻いて食べる「ポッサム」が定番
地域によっては“生ガキ”を合わせて食べることも!
地域ごとに違う!キムジャンキムチの特徴
韓国は南北に長く、気候も食材も多様。そのため、キムチも地域ごとに味の特徴が大きく違います。
ソウル・京畿道
・全国の食材が集まるため味が豊富
・えびの塩辛を使用した“ちょうど良い塩味”
・ボッサムキムチ、チョンガクキムチが代表
江原道
・海産物が豊富:イカキムチ、塩辛ベース
・山菜や野草を加えた素朴な味も多い
・白キムチなど優しい味わい
忠清道
・塩辛より塩で仕上げる淡泊な味
・梨・栗・シイタケなど自然派食材が多い
全羅道
・味付けが濃く塩辛使用量も多め
・野菜と具材が多くコク深いキムチが多い
・“ごちそうキムチ”が多い地域
慶尚道
・南部の温暖な地域のため塩多めでしっかり味
・ニンニク・唐辛子粉多めの刺激的な味
・ミナリやニラなど香りの強い食材を使用
“キムジャン”は今も人々をつなぐ韓国文化
キムジャンは、単にキムチを作る作業ではありません。
家族が一緒に手を動かす
地域で助け合う
代々伝わる味を守る
新しい世代へ受け継ぐ
こうした「文化の継承」そのものが、韓国のキムジャン文化の本質です。
ユネスコ遺産にも登録された理由は、まさに “人のつながりを生む文化” だから。
旅行や料理を通して韓国文化に触れる方にとっても、キムジャンは“韓国らしさ”を感じられる象徴的な存在です。
おわりに
キムチは、韓国の歴史や与えられた環境の中で育まれ、家族や地域をつなぐ大切な食文化として今も息づいています。
韓国に興味のある方は、ぜひキムチの背景にある文化にも目を向けてみてください。
食べ慣れたキムチの味が、きっともっと深く感じられるはずです。
