日本でも「よもぎ蒸し」という言葉はすっかり定着し、女性向けサロンとして見かける機会が増えました。聞き馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
実は、よもぎ蒸しが体系的に発展し、今も日常的に取り入れられている国がお隣の韓国です。韓国では、よもぎ蒸しは単なるリラクゼーションではなく、伝統医学に基づくケア方法の一つとして長い歴史を持っています。
今回はそんな韓国のよもぎ蒸しについてご紹介します。
韓国のよもぎ蒸し「좌훈(坐薰/ジャフン)」
韓国のよもぎ蒸しは「좌훈(坐薰/ジャフン)」と呼ばれます。
「坐(座る)+薰(蒸す)」という文字通り、座った状態で下半身に薬草の蒸気を当てる伝統的な温熱療法です。
●歴史的背景
좌훈の起源は古代中国にあり、韓国では朝鮮時代の医学書『東医宝鑑(1613年)』にもその記述が残されています。
当時は、特に女性の体調管理に重きを置いた方法として用いられ、
•生理痛
•冷え
•出産後の回復
•体力低下時のケア
などを目的に、日常的に活用されていました。
医療が今ほど発達していなかった時代において、体を温め、巡りを整えるという考え方は非常に重要であり、좌훈はその代表的な方法の一つだったとされています。
●現代の韓国におけるよもぎ蒸し
現代の韓国では、
•韓医院(韓方クリニック)
•よもぎ蒸し専門サロン
•家庭用よもぎ蒸し
など、さまざまな形でよもぎ蒸し(좌훈)が取り入れられています。
特に韓医院では、診察や体質判断と組み合わせて行われるケースもあり、伝統医学的ケアの一環として扱われている点が大きな特徴です。
韓国特有の公衆浴場であるチムジルバン(찜질방)にて、追加オプションとして用意されていることもあります。
チムジルバン(찜질방)について詳しく紹介している記事もあります。あわせてご覧ください。https://wanjeon.tv-aichi.co.jp/151-article/
韓国と日本のよもぎ蒸しの違い
① 使用する薬草の種類と考え方
日本のよもぎ蒸しは、
•よもぎ単体
•よもぎ+数種類のハーブ
といった比較的シンプルな構成が主流です。
一方、韓国のよもぎ蒸しでは、よもぎをベースに複数の韓方薬草を組み合わせることが一般的です。
これは「体質や目的に応じて使う薬草を変える」という韓医学の考え方に基づいています。
よもぎ自体、韓国では古くから身近な薬草として利用されており、食用のみならずさまざまな場面で親しまれてきました。
② 目的別メニューが明確に分かれている
韓国のよもぎ蒸しの大きな特徴の一つが、目的別にメニューが明確に分かれている点です。
例えば、
•冷え対策向け
•生理関連の悩み向け
•産後ケア向け
•リラックス・体調管理向け
など、コース名や説明が具体的で、「なぜこの薬草を使うのか」がはっきりしています。
日本では「温活」「リラックス」といった包括的な表現が多いのに対し、韓国ではより実用的・目的重視な印象を受けます。
③ 病院や韓医院でも行われる点
日本との最も大きな違いが、医療機関である韓医院でもよもぎ蒸しが行われていることです。
韓医院(한의원)とは?
韓医院は、韓国で600年以上の歴史をもつ韓国伝統医学に基づき、国家資格を持つ『韓医師(韓方専門医師)』が診療を行う医療機関です。
西洋医学とは異なる「韓国伝統医学」に基づき、
•漢方処方
•鍼灸
•推拿(手技療法)
•温熱療法
などを組み合わせて治療や体調管理を行います。
よもぎ蒸し(좌훈)はその中の一つとして位置づけられ、診察後に体質や状態を見て取り入れられることもある点が、日本のサロン文化との大きな違いです。
韓国のよもぎ蒸しに期待できる効果
※以下は、主に韓医学的・伝統的な考え方に基づく内容です。現代医学的に効果が確立されているわけではなく、感じ方には個人差があります。
●女性特有の不調へのアプローチ
韓国では、下半身を温めることで
•血流の巡りをサポートする
•冷えによる不快感を和らげる
といった目的で좌훈が用いられてきました。
特に、
•生理痛
•月経不順
•冷え性
•更年期障害
などに対して、体を内側から温めるケアとして考えられています。
●リラックス・ストレス緩和
温かい蒸気に包まれることで、
•筋肉の緊張がゆるむ
•呼吸が深くなる
といった変化を感じる人も多く、結果としてリラックス感や気分転換、不眠症などの症状緩和につながるとされています。
現代の忙しい生活の中で、疲労効果を期待し、意識的に体を休める時間として取り入れられている側面もあります。
●美容効果
韓医学では、蒸気によって不要なものを外へ出すという概念があります。
よもぎ蒸し(좌훈)を行うことで、体温が上昇し、血液循環が良くなる事で代謝が高まり、体内の老廃物の排出がスムーズになることでデトックス効果が期待できます。また発汗作用で毛穴汚れが取り除かれ、肌が綺麗になるといった美容効果も期待できます。
よもぎそのものにも鎮静効果や抗菌作用のある成分が含まれており、温熱×よもぎの相乗効果によって、健康のみならず、美容効果もあると考えられます。
※あくまで補助的なケアとして捉えることが重要です。
実際に韓国でよもぎ蒸しを体験する方法
●検索方法
韓国で探す場合は、以下の韓国語キーワードが有効です。
『좌훈(ジャフン)』
『한의원 좌훈(ハニウォン ジャフン)』
地図アプリやポータルサイトで検索すると、韓医院や専門サロンが見つかりやすくなります。
また日本語で、
『韓国式 よもぎ蒸し』
『韓方 よもぎ蒸し』
と検索しても韓国のよもぎ蒸しの予約サイトにも飛べます。そういったサロンでは日本語対応可能な場合が多いため、韓国語に自信のない方でも安心して韓国でよもぎ蒸しを体験できます。ぜひチェックしてみてください。
●所要時間の平均
一般的な施術時間は15〜90分程度です。
長時間行えば良いというものではなく、体への負担を考慮し、適切な時間に適切な温度を保つことが重視されます。
●価格帯の平均
よもぎ蒸し(좌훈)の価格帯は場所やコースによって様々。
一番シンプルで比較的短時間のよもぎ蒸しであれば10,000ウォン〜で体験が可能です。
コースや所要時間によっても価格は様々なため、ぜひご自身にあった条件のよもぎ蒸しを体験してみてください。
●注意事項・安全に利用するために注意すること
•蒸気が熱すぎないか必ず確認する
•生理中の利用は不可
•体調がすぐれない日は無理をしない
•妊娠中、皮膚疾患がある場合は避ける
•不安がある場合は専門家に相談する
特に韓国では、韓医師の判断を仰ぐケースも多く、自己流での頻繁な使用は推奨されていません。
韓国の美容法「よもぎ蒸し」で美しく健康に
韓国のよもぎ蒸し(좌훈)は、単なるブームや美容法ではなく、長い歴史を持つ伝統医学的ケアとして受け継がれてきました。
日本のよもぎ蒸しと比べると、
•薬草の種類が多い
•目的別に体系化されている
•医療機関でも行われる
といった違いがあり、より「日常生活に根付いたケア方法」と言えます。
リラックス目的で取り入れるのはもちろん、体調や体質に合った使い方を意識することが何より大切です。
韓国旅行中に本場韓国式のよもぎ蒸しを試してはいかがでしょうか。
